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結論:成行は「確実に約定するが、価格を失う」。指値は「価格を守るが、機会を失う」
株の注文方法でつまずく人は、たいてい「どちらが得か」を探しています。その問いには答えがありません。
正しい問い方はこうです。
この場面で、私は「価格」と「約定」のどちらを優先するのか。
- 成行注文 … 価格を指定しない。確実に約定するが、いくらで買えるかは分からない
- 指値注文 … 価格を指定する。その価格を守れるが、約定しないことがある
どちらも一方を犠牲にしています。犠牲にしていいほうを選ぶ——それが注文方法の選び方です。
私は短期トレードを2年ほど毎日やってきましたが、この判断を毎回しています。この記事ではその基準を書きます。
成行注文——「いくらでもいいから今すぐ」
成行は価格を指定しない注文です。「今出ている一番有利な相手の注文と、すぐに成立させる」という意味になります。
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| ほぼ確実に約定する | いくらで約定するか分からない |
| 判断から実行までが速い | 板が薄いと大きく不利な価格で成立する |
| 逃げたいときに逃げられる | 気配が飛んでいると想定外の値がつく |
成行が危険になる瞬間
板が薄いときです。
板に十分な注文が並んでいれば、成行で買っても1〜2円しかずれません。でも注文がスカスカだと、買い注文が上の気配を次々に食べていき、想定より何十円も高い価格で約定します。
これを「滑る」と言います。
だから、出来高が細い銘柄では成行を使わないのが原則です。というより、そもそも出来高が細い銘柄を触らないのが先です(デイトレの銘柄選び)。
そしてもう1つ、寄り付き前の注文も成行は危険です。始値がどこで決まるか分からないまま「いくらでもいい」と言っているのと同じになります。
指値注文——「この価格なら買う」
指値は価格を指定する注文です。「1,000円以下なら買う」「1,050円以上なら売る」と条件をつけます。
| 長所 | 短所 |
|---|---|
| 想定外の価格で約定しない | 約定しないことがある |
| コストを計算して入れる | 待っている間に相場が動く |
| 落ち着いて判断できる | 「もう少し安く」で永久に買えない |
指値の最大の落とし穴
「あと1円安ければ買えたのに」を繰り返すことです。
1円を惜しんで見送った銘柄が、その後100円上がる。逆に、1円を惜しんで置いた指値が、下落の途中で刺さって含み損になる——指値は「有利な価格で買えた」ではなく「下がったから買えた」であることが少なくありません。
これは経営でも同じで、値切ることに集中しすぎると、本来の目的を見失います。 100円のコスト削減のために3日交渉するなら、その時間を売上に使ったほうがいい。トレードの1円も同じです。
【最重要】逆指値——損切りを自動化する注文
デイトレで最も大事な注文方法はこれです。
逆指値は、「指定した価格まで下がったら売る」という、指値とは逆向きの注文です。
- 指値の売り=「1,050円以上になったら売る」(利益確定)
- 逆指値の売り=「980円以下になったら売る」(損切り)
なぜ重要か。損切りは意志では実行できないからです。
含み損を抱えた自分は、必ず「もう少し待とう」と言います。だから、判断力のある時点で注文として置いておく。 逆指値はそのための道具です。
買い注文が約定したら、その場ですぐ逆指値の売り注文を置く。 これを習慣にするだけで、トレードの結果は変わります。
なお、逆指値が発動した後の執行方法も選べます。
- 逆指値 → 成行 … 確実に切れるが、滑る可能性がある
- 逆指値 → 指値 … 価格を守れるが、急落時に約定せず取り残される
損切りが目的なら、基本は成行です。切れないと意味がないからです。
使い分けの基準——場面別の早見表
| 場面 | 使う注文 | 理由 |
|---|---|---|
| 板が厚く、今すぐ入りたい | 成行 | 滑らないので速さを優先できる |
| 板が薄い | 指値 | 成行だと大きく不利な値がつく |
| 寄り付き前に注文を出す | 指値 | 始値が読めない |
| 支持線まで下がったら買いたい | 指値 | 価格が根拠なので待つのが正しい |
| 損切りしたい | 逆指値(成行) | 確実に切ることが最優先 |
| 急落中に逃げたい | 成行 | 価格より脱出を優先する場面 |
| 利益を確定したい | 指値/逆指値 | 目標価格なら指値、利益を守るなら逆指値 |
覚え方はシンプルです。
入るときは価格を優先(指値)。出るときは約定を優先(成行・逆指値)。
入るのは自分のタイミングで選べますが、出るのは選べません。 ここが非対称なので、注文方法も非対称にします。
その他の注文方法(無理に使わなくていい)
証券会社によって、他にもいろいろな注文方法があります。
- OCO注文 … 利益確定の指値と、損切りの逆指値を同時に出し、片方が成立したらもう片方が消える
- IFD注文 … 買い注文が約定したら、自動で売り注文を出す
- 不成注文 … 場中は指値、引けで成行に切り替わる
便利ですが、最初から使う必要はありません。 まずは「指値で入って、逆指値を置く」だけを確実にできるようにしてください。
注文方法を増やすより、同じ手順を毎回同じようにやるほうが、結果は安定します。
手数料と約定価格、どちらが効くか
見落とされがちな話をしておきます。
デイトレでは、手数料よりも約定価格のズレのほうが大きいことがあります。
株価1,500円を600株買う場合、1円滑るだけで600円のコストです。手数料が無料でも、滑れば同じだけ失います。
だから、
- 手数料の安さ … 回数をこなす人ほど効く
- 滑らない環境(流動性のある銘柄・板を見て発注) … 1回ごとに効く
両方必要です。 手数料だけで証券会社を選ぶと、板が見づらくて滑る、ということが起こり得ます。
証券会社をデイトレ目線で見るなら、確認するのは3点です。
1. 逆指値・OCOなどの注文が使えるか
2. 板と歩み値がリアルタイムで見られるか(できれば板から直接発注できるか)
3. 手数料の体系
私が使っているのは松井証券です。1日の約定代金50万円までなら手数料が無料で、一日信用取引の手数料も抑えられるので、少額で回数をこなして経験を積む段階と相性がいいと感じています。
もう1つ挙げるならDMM株です。日本株と米国株を同じアプリで扱えて、板から直接発注できる高機能ツールも用意されています。板を見ながら1クリックで発注できるのは、滑りを減らすうえで実際に効きます。
口座は複数持っておいて損はありません。 使い勝手は触るまで分かりませんし、システム障害で片方が使えなくなることもあります。比較はネット証券のおすすめ比較にまとめています。
よくある質問
Q. 初心者はどちらを使うべきですか?
入るときは指値、損切りは逆指値から始めてください。成行は「板が厚い銘柄で、今すぐ逃げたいとき」に限定するのが安全です。
Q. 指値が約定しないときはどうしますか?
追いかけないでください。 価格を根拠に指値を置いたなら、その価格に来なかった時点で前提が成立していません。追いかけて成行にした瞬間、根拠のない取引になります。
Q. 成行で買ったら想定より高い価格で約定しました。
板が薄かったか、気配が飛んだかのどちらかです。その銘柄では成行を使わない、あるいはその銘柄を触らない判断に切り替えてください。滑る銘柄は損切りでも滑ります。
Q. 逆指値は必ず約定しますか?
逆指値→成行にしておけば、通常はほぼ約定します。 ただしストップ安に張り付いたような極端な状況では、成行でも売れないことがあります。だからそもそも流動性のある銘柄を選ぶことが前提になります。
Q. 逆指値を置いたら狙われませんか?
きりのいい価格や直近安値のすぐ下は約定が集中しやすい場所です。気になるなら節目から少し離して置いてください。 置かない選択は本末転倒です。
Q. 引けで確実に売りたいときは?
不成注文(場中は指値、引けで成行)が使える証券会社なら便利です。ただし使えなくても、引け前に成行で出せば実務上は足ります。
どの時間帯にどの注文が向くかはデイトレの1日の流れを参照してください。
一日信用の強制決済を避ける話は信用取引と一日信用取引の仕組みを参照してください。
まとめ
1. 成行は「価格を失う」、指値は「機会を失う」。どちらが得かではなく、何を犠牲にするかで選ぶ
2. 成行が危険なのは板が薄いとき。滑って想定外の価格で約定する
3. 指値の落とし穴は「1円を惜しんで買えない」。値切ることが目的化しない
4. 損切りは逆指値で自動化する。約定したらその場で置く
5. 逆指値の執行は基本は成行。切れないと意味がない
6. 入るときは価格優先、出るときは約定優先——非対称でいい
7. 1円滑れば600株で600円。手数料と同じくらい約定価格が効く
注文方法は「知識」ではなく「手順」です。毎回同じ手順で出せるようになると、判断に使える集中力が増えます。
デイトレの全体像は株のデイトレの始め方、切る場所の決め方は株の損切りルールの決め方にまとめています。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や投資手法を推奨するものではありません。注文方法の名称や仕様は証券会社によって異なります。投資判断はご自身の責任でお願いします。株式投資は元本割れのリスクがあります。必ず余剰資金で行ってください。


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