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結論:デイトレで信用取引を使う理由は「3倍買えるから」ではない
信用取引の解説はたいてい「自己資金の約3.3倍まで取引できる」から始まります。そう理解したまま始めると、かなりの確率で退場します。
デイトレで信用取引が使われる本当の理由は、レバレッジではありません。
同じ資金を、1日に何度も使い回せるからです。
現物取引では、同じ資金・同じ銘柄で、その日のうちに2回転目ができません(差金決済の禁止)。信用取引にはこの制限がありません。
私は短期トレードを2年ほど毎日やってきましたが、信用を使う目的はここです。倍率を上げるためではなく、回転数を確保するためです。 この違いを分かっていないと、使い方を間違えます。
そのうえで、信用取引は現物より確実に危険です。この記事ではコストとリスクも正直に書きます。
信用取引とは——証券会社から借りて売買する
信用取引は、証券会社にお金や株を借りて売買する仕組みです。
- 信用買い … お金を借りて株を買う
- 信用売り(空売り) … 株を借りて売り、後で買い戻す
担保として委託保証金を預けます。法令上の最低ラインは保証金30万円以上、委託保証金率30%以上。この結果、保証金の約3.3倍までの取引が可能になります。
ただし、この「3.3倍」が本題ではありません。
【本題】デイトレで信用を使う本当の理由——差金決済の回避
ここが実務でいちばん重要な話です。
現物取引には「1日1回転」の壁がある
現物取引では、同じ資金・同じ銘柄で、その日のうちに2回転目ができません。
具体例で説明します。資金100万円で、A社の株を扱うとします。
| 現物 | 信用 | |
|---|---|---|
| 1回目:買って売る | ✅ できる | ✅ できる |
| 2回目:同じ日にもう一度買う | ❌ できない | ✅ できる |
売った代金は、実際には2営業日後(受渡日)に入ってくるためです。まだ手元にないお金で買うことになるので、これを差金決済といい、現物取引では禁止されています。
つまり現物のデイトレは、1銘柄につき1日1往復が上限です。
信用取引ならこの制限がない
信用取引は差金決済の禁止の対象外なので、同じ資金で1日に何度でも売買できます。
デイトレは1日に複数回チャンスを取りに行く手法なので、回転できないことは致命的です。だから信用が使われます。
繰り返しますが、これは「3倍のポジションを持つため」ではありません。 保証金と同額かそれ以下のポジションでも、回転できるメリットは十分にあります。
制度信用と一般信用の違い
信用取引には2種類あります。
| 制度信用 | 一般信用 | |
|---|---|---|
| 対象銘柄 | 取引所が選定した銘柄 | 証券会社が決める(広い) |
| 返済期限 | 6ヶ月 | 証券会社による(無期限・当日など) |
| 金利・貸株料 | 低め | 高めのことが多い |
| 逆日歩 | 発生する | 発生しない |
一日信用取引とは
一般信用の一種で、「その日のうちに返済する」ことを前提にした信用取引です。
- 金利・貸株料が非常に安く設定されている(証券会社によっては0円)
- 売買手数料も抑えられていることが多い
- その代わり、返済しないと強制決済され、追加の手数料がかかる
デイトレ専用の商品と考えて差し支えありません。その日のうちに必ず決済するという前提を守れる人にとっては、コスト面で最も有利な選択肢になります。
なお「その日のうちに決済する」はデイトレの1日の流れで書いたとおり、そもそもデイトレの大前提です。
信用取引の3つのコスト
現物にはないコストがあります。ここを知らずに使うと、勝っているつもりで負けます。
1. 金利(買い)・貸株料(売り)
日数分かかります。 デイトレなら1日分なので小さいですが、持ち越すと積み上がります。
一日信用ならここが非常に安く設定されているのが利点です。
2. 逆日歩(品貸料)——これがいちばん怖い
制度信用の売り(空売り)で、貸し出せる株が足りなくなったときに発生する追加コストです。
怖い理由は金額の大きさではありません。
事前に金額が分からないことです。
逆日歩は、その日の需給によって後から決まります。数百円で済むこともあれば、数万円になることもあります。 決算や優待の権利日前後は特に大きくなりがちです。
初心者は制度信用の売りをやらない。 これだけ守っておけば、逆日歩に遭うことはありません。一般信用(一日信用を含む)では発生しません。
3. 強制決済のコスト
一日信用で返済を忘れると、証券会社が自動で決済します。そのときの価格は選べませんし、追加の手数料もかかります。
「忘れる」は起こります。だから逆指値を置いておくのが基本です。
【最重要】信用取引の本当のリスクは追証
コストより深刻なのはこちらです。
保証金の維持率が一定を下回ると、追証(追加保証金)が発生します。期限までに入金できなければ、強制決済されます。
そして決定的な違いがこれです。
信用取引では、損失が預けた資金を超えることがあります。
現物なら、最悪でも投資した金額がゼロになるだけです。信用取引は違います。マイナスになり、支払い義務が残ることがあります。
経営で言えば「借入」と同じ
私は会社を経営していて借入もしていますが、借入そのものは悪ではありません。 事業を伸ばすには必要な場面があります。
問題になるのは1点だけです。
返済原資を持たずに借りること。
信用取引もまったく同じです。判断基準は「儲かりそうか」ではなく、
追証が来たときに、その場で払える現金があるか。
払えないなら、そのポジションは最初から大きすぎます。「余剰資金で」という原則が、現物よりもさらに厳しく効きます。
信用取引を使っていい条件——1つでも欠けたら現物だけにする
自分の基準を書いておきます。
- 損切りが習慣になっている(損切りルールを毎回実行できている)
- 現物で一定期間続けたうえで、回転数が足りないと実感している
- 追証が来ても、その場で払える現金がある
- 一日信用で、その日のうちに必ず返済する運用ができる
- 制度信用の売りはやらない(逆日歩を避ける)
- 流動性のある銘柄しか触らない(強制決済でも逃げられる)
1つでも欠けているなら、信用は使わずに現物だけでやってください。
順番としては、まず現物で損切りを習慣化する。回転できないことが本当にボトルネックになってから、はじめて信用を検討する。この順番を飛ばして得をした人を見たことがありません。
手数料と口座について
一日信用取引は証券会社によって条件の差が大きいところです。金利・貸株料・売買手数料の3つを見てください。
デイトレ目線で確認するのは3点です。
1. 一日信用(デイトレ向け信用)の条件(金利・貸株料・手数料)
2. 板と歩み値がリアルタイムで見られるか
3. 逆指値などの注文が使えるか
私が使っているのは松井証券です。一日信用取引の売買手数料が0円(※諸条件あり)で、1日の約定代金50万円までなら現物の手数料も無料。少額で回数をこなして経験を積む段階と相性がいいと感じています。
もう1つ挙げるならDMM株です。日本株と米国株を同じアプリで扱えて、板から直接発注できる高機能ツールも用意されています。ツールの操作性を重視するならこちらも候補になります。
口座は複数持っておいて損はありません。 使い勝手は触るまで分かりませんし、システム障害で片方が使えなくなることもあります。比較はネット証券のおすすめ比較にまとめています。
よくある質問
Q. 初心者でも信用取引を使っていいですか?
まず現物でやってください。 損切りが習慣になっていない段階で信用を使うと、損失が資金を超える可能性があります。現物なら最悪でもゼロで止まります。この差は決定的です。
Q. レバレッジは何倍にすべきですか?
デイトレで信用を使う目的は回転数の確保なので、保証金と同額程度でも十分に意味があります。 倍率を上げるほど、同じ値動きで追証に近づきます。
Q. 空売りはやってもいいですか?
仕組みは理解しておく価値がありますが、制度信用の売りは逆日歩のリスクがあります。 やるなら一般信用(一日信用を含む)にしてください。金額が事前に分からないコストは、リスク管理の対象にできません。
Q. 一日信用で返済を忘れたらどうなりますか?
証券会社が強制的に決済します。 価格は選べず、追加の手数料もかかります。逆指値を置いておけば、忘れても切れている状態になります。
Q. 現物と信用、どちらが手数料は安いですか?
一日信用は売買手数料が非常に安く設定されていることが多い一方、金利・貸株料がかかります。 1日で決済するなら金利は小さいので、回数をこなすほど信用のほうが有利になる場合があります。証券会社ごとに条件が違うので、必ず自分で確認してください。
Q. 差金決済の禁止は、別の銘柄でも適用されますか?
制限は同一銘柄・同一資金についての話です。別の銘柄なら、資金が残っていれば買えます。ただし資金は有限なので、現物だけで1日に何度も回すのは実務的に難しくなります。
信用取引の金利・貸株料の税務上の扱いは株の税金と特定口座にまとめています。
まとめ
1. デイトレで信用を使う理由はレバレッジではなく、同じ資金を1日に何度も回せること
2. 現物は差金決済の禁止で、同じ資金・同じ銘柄では1日1往復が上限
3. 制度信用と一般信用は別物。一日信用は一般信用の一種でデイトレ専用
4. 逆日歩は事前に金額が分からない——初心者は制度信用の売りをやらない
5. 信用は損失が預けた資金を超えることがある。現物との決定的な違い
6. 判断基準は「儲かりそうか」ではなく「追証が来たら払えるか」。借入と同じ
7. 損切りが習慣になっていないなら、信用は使わない
信用取引は、使いこなせば効率を上げる道具です。ただし下手を早く大きくする道具でもあります。 現物で勝てない人が信用で勝てるようになることはありません。
デイトレの全体像は株のデイトレの始め方、切る場所の決め方は株の損切りルールの決め方にまとめています。
※本記事は情報提供を目的としたもので、特定の銘柄や投資手法、信用取引の利用を推奨するものではありません。信用取引は預けた保証金を超える損失が生じるおそれがあります。 手数料・金利・保証金率などの条件は証券会社および制度改正によって異なります。必ずご自身で最新の条件を確認し、投資判断はご自身の責任でお願いします。


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