著作権切れの本をKindleで出版する方法|仕入れ0円で8冊出した実録と、やってはいけない売り方

副業を始める

結論:仕入れは本当に0円。ただし「そのまま出す」のは禁止されている

副業で物を売るとき、いちばん重いのが仕入れです。在庫を抱えるリスクも、最初の資金も、ここで発生します。

著作権が切れた本(パブリックドメイン作品)を使えば、その仕入れがゼロになります。原本は誰でも自由に使えて、使用料も許可申請もいりません。国立国会図書館が原本の画像をインターネットで公開しているので、手に入れるのも無料です。

ただし、ここから先を勘違いすると出版が停止されます。Amazonは「著作権切れの本をそのままアップロードして売る」ことを認めていません。

私は2026年8月から明治・大正の書物を現代語訳して、8冊出しました(7冊はKindle、8冊目は紙の塗り絵です)。この記事では、著作権の判定方法から、Amazonのルール、実際の作り方までを、実際にやった手順で書きます。収益の数字も最後に正直に載せます。

そもそも、どの本が「著作権切れ」なのか

日本の著作権は、著作者の死後70年で消滅します(2018年12月30日以降。それ以前は50年でした)。

判定の基本は3つです。なお2018年の法改正で50年から70年に延びましたが、改正の時点ですでに切れていた著作権が復活することはありません。そのため下表の「1967年以前」という目安になります。

種類 保護期間 実務上の目安
個人名義の著作物 著作者の死後70年 1967年以前に亡くなった人はパブリックドメイン
団体名義(会社・団体が著者) 公表後70年 1967年以前に公表された団体著作はパブリックドメイン
著作者不明 公表後70年 同上

注意すべき点が2つあります。

1つ目は、挿絵や写真の権利が別人にあること。本文の著者が1900年に亡くなっていても、挿絵を描いた人が1980年まで生きていたら、その挿絵はまだ保護されています。図版を使うなら、描いた人を個別に確認してください。

2つ目は、翻訳や現代語訳には新しい権利が発生すること。原本が著作権切れでも、誰かが訳したものには訳者の権利があります。他人の現代語訳を参考にするのはNGで、原本から自分で訳す必要があります。

迷ったときの確実な確認方法

国立国会図書館デジタルコレクション(dl.ndl.go.jp)では、資料ごとに公開範囲が表示されています。

  • 「インターネット公開(保護期間満了)」 → 著作権が切れている。自由に使える
  • 「インターネット公開(許諾)」「国立国会図書館内限定」 → 権利が生きている。使わない

私は「保護期間満了」と明記されたものだけを使っています。判断に迷う資料は最初から候補から外すのが安全です。

原本はどこで手に入るか

無料で使える主な入手先は2つです。

国立国会図書館デジタルコレクション
明治・大正・昭和初期の書籍が、原本のページ画像で公開されています。料理書、技術書、教科書、実用書——市販の復刻がされていない本が大量にあります。復刻・出版に許可申請は不要で、出典を明記するよう協力を求められているだけです。

青空文庫
文学作品が中心で、すでにテキスト化されています。ただし有名作品はすでに何十人もKindleで出しているため、後発が勝つのは難しいです。

私が国会図書館の実用書を選んだのは、テキスト化されていない=手間がかかるぶん、競合がいないからです。青空文庫は便利ですが、便利なぶん競合も多い。ここは副業全般と同じ構造です。

Amazonのルール:そのまま出すと停止される

ここがいちばん重要です。

KDP(Kindleダイレクト・パブリッシング)には、パブリックドメイン作品についての規定があります。すでに出回っている内容と同じものをアップロードするだけの本は、原則として出版できません。

出版が認められるのは、独自の付加価値を加えた場合だけです。KDPのヘルプには、次のいずれか1つ以上を満たすこと、と明記されています。

  • 翻訳版——オリジナルの翻訳
  • 注釈付き——オリジナルの注釈(解説、批評、詳細な略歴、歴史的背景などの追加情報)
  • 図解版——10点以上のオリジナルの図版

そのうえで、守るべき形式の決まりが2つあります。

1つ目は、タイトルに「(翻訳版)」「(注釈付き)」「(図解版)」と入れること。Amazonが挙げている例がわかりやすくて、『プライドと偏見 (注釈付き)』はOK、『プライドと偏見 (◯◯による前書きを含む)』はNGです。独自性の中身を説明するのではなく、決められた語を入れるという趣旨です。

2つ目は、商品説明(内容紹介)の冒頭に、何が独自なのかを箇条書きで示すこと。1項目あたり最大80文字とされています。これは見落としやすいので注意してください。

私の本は「現代語完全版(翻訳・注釈付き)」という表記を全冊に付けています。これはデザインの選択ではなく、規約上の要件です。

ここを軽く見て「著作権切れだから何でも出せる」とやると、出版の却下だけでなく、アカウント停止の対象にもなり得ます。規定は変わることがあるので、KDPヘルプの「パブリックドメイン コンテンツの出版」を必ず自分で読んでから始めてください。

実際の作り方(私がやった5ステップ)

1. 本を選ぶ

私の基準は3つです。

  • 「保護期間満了」と明記されている
  • まだ誰も現代語訳を出していない(Amazonで書名を検索して確認)
  • 中身に今読んでも面白い具体性がある

明治の料理書を選んだのは、レシピという形式が時代を超えて読めるからです。思想書や小説は訳の巧拙が問われますが、レシピは「材料と手順」という骨格がはっきりしています。

実用書には、当時の生活がそのまま数字で残っていることがあります。私が訳した大正6年の家計本には、内職の賃金が一覧で載っていました。中身を百年前の「副業リスト」を読んだら、今と同じことが書いてあったで紹介しています。

2. 原本を全ページ読む

ここがいちばん時間のかかる工程です。

明治の本は縦書き・旧字体・総ルビで、そのままでは現代の読者には読めません。1ページずつ画像を見て、文字を起こしていきます。

OCR(文字の自動読み取り)は使えますが、明治の本は総ルビがあるためルビが本文に混ざり、誤字も大量に出ます。出版に使う品質にするには、結局は原本の画像と1ページずつ突き合わせることになります。私はこの照合を全ページ分やりました。

3. 現代語に訳し、注釈を付ける

訳すときのルールを最初に決めておくと、ブレません。私の場合はこうしました。

  • 原本にない事実・工程・分量を足さない。削らない
  • 度量衡(匁・合・寸)は原文のまま残し、括弧でグラム・ミリリットルを併記する
  • 読めない字は推測で埋めず「判読不能」と書く
  • 品名は原本の表記を残し、読みを併記する

注釈は付加価値そのものなので、手を抜けません。当時の材料が今の何にあたるか、その道具は今でいう何か、そして現在の知識から見て危険な記述には必ず注意を書く。

たとえば私が訳した本には、酸性の果物を亜鉛メッキの容器で加熱する工程や、今では食品に使えない着色料が出てきます。当時の記録として訳したうえで、「現代に再現する場合は」という注意を添えました。料理書を現代語訳する以上、ここは飛ばせません。

4. 電子書籍の形にする

EPUBという形式のファイルを作ります。無料の作成ソフト(Kindle CreateやCalibre)でも作れますし、私は自作のスクリプトで組んでいます。

表紙は1600×2560ピクセルのJPEG。私は画像生成AIではなく、明朝体と罫線だけのシンプルな装丁にしています。復刻本らしい見た目のほうが、中身と合うからです。

5. KDPに登録する

登録時のポイントは3つです。

  • サブタイトルに「翻訳・注釈付き」を明記(前述の規約要件)
  • 出版に関して必要な権利の選択は、慎重に。KDPは「これはパブリックドメインの作品です」を選んだ本を、70%の印税率にもKDPセレクト(読み放題)にも対象外としています。一方で、自分で訳し注釈を付けた版は、その訳文と注釈が自分の著作物にあたります。私は後者と判断して「私は著作権者であり、出版に関して必要な権利を保有しています」を選びました。どちらを選ぶかで収益条件が大きく変わるので、自分の本がどちらなのかを整理してから選んでください
  • AI利用があるなら正直に申告する(申告自体は減点ではありません)

かかった費用と時間

項目 実額
原本の入手 0円(国立国会図書館)
表紙 0円(自作)
出版費用 0円(KDPは無料)
合計 0円

時間は、最初の1冊が実働20日ほど。手順が固まった7冊目は、選書から出版申請まで実働1日でした。

費用が0円というのは、本当です。失敗しても財布は痛みません。副業の練習台としては、この安全性は他にない長所です。

正直な収益:7冊で、1か月におよそ1,000円

ここが肝心なところなので、隠さずに書きます。

月 販売 読み放題の既読ページ 収入
8月(初月・6冊) 0冊 101ページ 約50円
9月(7冊) 1冊 154ページ 約1,000円

7冊出して、月1,000円です。時給に換算するのはやめておきます。

理由ははっきりしていて、誰にも見つかっていないからです。Amazonの検索順位は販売実績で決まるので、実績ゼロの本は検索結果に出てきません。そして私が選んだジャンルは、そもそも検索する人がほとんどいませんでした。

唯一動いたのは、ブログ記事から自著にリンクを置いたときでした。無料キャンペーンでAmazon内の順位を上げようとした施策は空振りで、外から連れてきた1人が買ってくれた。この経緯は前の記事に数字ごと書いています。

8冊目で、電子書籍をやめて紙にしました

ここまでの7冊は全部Kindleの現代語訳本です。結果は上のとおりで、文字の本は読まれる前に見つからないという壁に当たりました。

そこで8冊目は、同じ著作権切れの素材を使って、紙の塗り絵にしました。

明治時代に「雛形本(ひながたぼん)」という本がありました。染物屋や彫師が、店先で客に開いて見せるための図案帳です。「この柄で」と指で差してもらうための見本帳なので、輪郭がかならず閉じていて、面がはっきり分かれている。そのまま塗り絵になります。

なぜ塗り絵かというと、買う理由が「読みたい」ではなく「塗りたい」だからです。文字の本は内容を知ってもらわないと買われませんが、塗り絵は表紙とサンプル画像で判断されます。無名でも土俵に乗れる可能性がある、と考えました。

紙は手取りの構造がまったく違う

ここは実際にやってみて分かった数字です。

Kindle ペーパーバック
ロイヤリティ率 70% 60%
印刷コスト なし 1冊ごとに引かれる
手取り(例) ¥1,300の本で約¥900 ¥1,980の本で¥544

紙は、値段が1.5倍でも手取りは6割です。印刷コストが固定費として乗るためで、私の場合は1冊¥536でした(21.6cm角・110ページ・白黒)。

もう一つ、KDPの価格欄は税抜で入力します。¥1,980と打つと店頭は¥2,178になります。これを知らずに競合の店頭価格と並べると、狙っていない価格帯に着地します。

結果はまだ出ていません

2026年9月に出したばかりで、売れたかどうかは分かりません。同じ作り方で続編もすぐ出せたので、いまは2冊あります。この記事に成功談を書けるかどうかも、まだ分かりません。数字が出たら、良くても悪くても追記します。

向いている人・いない人

向いている人 向いていない人
すでに読者を送り込める媒体(ブログ・SNS)を持っている人 「出せば印税が入る」と思っている人
資料を読んで整理する作業が苦にならない人 短期で収入がほしい人
費用ゼロの実験として割り切れる人 時給換算で考える人

この副業の最大の長所は、費用が0円であることです。そして最大の短所は、作っただけでは誰にも読まれないことです。この2つは表裏一体で、参入が簡単だから、参入後の集客が全てになります。

まとめ:仕入れ0円の代わりに、集客が全部のしかかる

著作権切れの本を使った出版は、仕入れリスクが完全にゼロという点で、他の副業にない特徴を持っています。合法で、費用もかからず、失敗しても損失は時間だけです。

ただし「著作権切れ=そのまま売れる」ではありません。翻訳か注釈か図解で独自の価値を足し、それをタイトルと商品説明に明示することがAmazonの条件であり、その手間こそが競合との差になります。

そして最後に残るのは、どの副業でも同じ問題です。作ったものを、誰にどうやって届けるか。私はいま、そこで詰まっています。進展があれば、また数字ごと公開します。

実際に出した本は、Amazonで見られます。※自著です。アフィリエイトリンクではありません。

*運営者の経歴はこちら。*

はらおじさん

「副業のしくみ」運営者・はらおじさん。26歳で成長企業に役員(No.3)として参画し、年商3,000万円規模から数十億円規模への成長を、新規事業立ち上げやM&Aの現場で経験。持ち株のない“雇われ役員”の限界を痛感して独立し、自分の事業を年商2億円に育てる。株のデイトレ(テクニカル分析)と長期投資15年、せどり・物販まで「稼ぐ力」と「増やす力」を自分で実践。会社に依存しない生き方を、実体験と一次情報で発信しています。

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